第22章 花いちもんめ✔
「──で、あんたらもついてくるって訳かい」
「うむ、勿論だ!」
「ご迷惑はおかけしないようにしますので…」
「そりゃあな。俺も情報収集込みで」
「君はついてくる必要がないだろう、自分の仕事をしたらどうだ!」
「だから今情報収集つっただろ! とことん蛍絡みだと面倒臭ぇなお前は!」
「それを君が言うか!!」
「煩いったらありゃしないねぇ…本当にあんなのがあんたの連れなのかい?」
「あはは…すみません。悪い人達ではないので」
松風の案内で花街の情報屋へと足を向けることとなった。
当然のように後ろをついて歩く髪色の派手な三人組に、振り返った松風が呆れた溜息をつく。
「あんな異邦人が出歩いちゃ目立って仕方ないねぇ…帯刀までしてるじゃあないか。あんた、変な輩(やから)とまた絡んでいないかい?」
「あはは…」
特殊と言えば特殊。
その説明を一からすれば、また話が長くなってしまう。
曖昧に乾いた笑顔で蛍は取り繕った。
「それより情報屋なんてありましたっけ? 此処」
「あんたは周りに興味が全くなかったからね。知らなかっただけで、前々からちゃんと存在していたさ。あんたもよく知っていると思うよ」
「え?」
「…柚霧ちゃん…?」
松風が訪れたとある店内。
其処で竹笠を脱いだ蛍に、出迎えた男は驚き固まった。
「憶えていてくれたんですね。東屋(あずまや)さん」
卸売りを生業としている東屋。
その店主である男は蛍にも馴染みがあった。
この色町で働いている女達全員が馴染みがあると言っても過言ではない男だ。
「ったり前だろ…! 生きてたんだなァ柚霧ちゃんッ!」
蛍の両肩を鷲掴むと、わなわなと震える声で叫ぶ。
「俺ァてっきりあの夜に死んじまったもんかと…っ菊葉ちゃんだって…っ」
「…姉の死はそんなに広まっているんですか?」
「っ…いや。知っているのは僅かばかりさ。それよりあの事件自体の忌まわしさの方が注目を浴びたからなァ」
「そうですか…」
ぐすりと鼻を啜りながら頸を横に振る東屋に、蛍は自然と声を曇らせた。
だとすれば男達が姉にした仕打ちも公にはなっていないのだろう。