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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第22章 花いちもんめ✔



「……松風さん」

「なんだい」

「月房屋のことは知らなかったけれど、男達の大まかなことは知っていました。…私が知りたいのは、その先で」

「へえ。何を調べてるんだい?」

「与助という男をこの間、見たんです。間違いなくあの男でした。…松風さんは、あの男の所在をご存じでしょうか」

「与助? あいつかい? さてね、あたいはてっきり死んだものとばかり思っていたよ。…まぁあんたが生きていた時点で、あんまり驚きもしないけどさ」


 言葉通り、然程驚いてはいない様子で松風は肩を竦めた。


「与助ねぇ…此処いらで見たって話は聞かないね。大方あんたみたいに事件後、足を遠のかせたんじゃないのかい?」

「…そうですか…」


 蛍が軽くでも俯いてしまうと、竹笠でたちまちに表情は見えなくなる。
 考えるように虚空を見上げていた松風はちらりとその様を見ると、小さく溜息をついた。


「まぁ。情報が集まる所なら知っているから、教えてやってもいいけどさ」

「──!」


 途端にぱっと顔を上げて無言の期待を向ける蛍に、松風は自分に呆れるようにまた一つ、溜息をついたのだった。




















「ったく…なんで離れる必要があったんだよ。俺は気になったんだけど? 柚霧って名前も出てきたしな」

「俺達が関わっているのは彩千代蛍という人物だ。柚霧ではない。よって此処では部外者だ」

「だからなんだよ? 別に話に顔突っ込もうって気はねぇよ。ただ知ろうとしたっていいだろ」

「よくない」

「なんでだよ」

「なんででもだ」

「そりゃお前の都合だろ」

「そうだ俺の都合だ! だから頸を突っ込まないで頂きたい!」

「ほーお、とうとう出たな本性が」

「ぁ、兄上。また騒がれますと周りに迷惑が…っ」


 コスモス畑から少し離れた、建物の一角。
 陰のかかるその場に腕組みをして待機する杏寿郎と、隣で腰を屈めて退屈そうに頬杖を突く天元と、そわそわと二人を見守る千寿郎がいた。


「ま、最初っからわかってたけどよ。お前、蛍絡みとなるといつもの五割増しで素っ気なくなるからな」

「わかっていながら毎度口出しをしてくる君も大概しつこいな」

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