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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第22章 花いちもんめ✔



 虐殺。

 わかってはいたが、改めて言葉にされて他人から聞くと、ずんと胸が重くなるような話だ。
 ちらりと杏寿郎に目を向けると、蛍は眉尻を下げて視線を流した。
 その視線の先には千寿郎がいる。


「…千寿郎。宇髄。我らは席を外そう」

「え?」

「は?」

「彼女達にも積もる話はあるだろう。部外者の我らが邪魔をしていいものではない。行くぞ!」

「あ、兄上っ!?」

「うおッ引っ張んな煉獄…!」

「近くにいる! 終わったら呼ぶように!」


 千寿郎の手を取り、天元の隊服を掴み。颯爽とその場から離れる杏寿郎に、ほっと蛍は安堵の息をついた。

 例え影沼で知ってしまったとしても、この先の内容はあまり千寿郎に聞かせたい話ではない。


「なんだい。あの異邦人、状況を理解する頭は持っているじゃないか」


 杏寿郎は、蛍の視線に気付いて行動を起こした。
 その様に松風もまた感心気味に呟く。


「それで、松風さん。先の話を伺えますか」

「…本当に聞くつもりかい?」

「はい」

「はぁ…そういう変に頑固なところは変わらないね。…あんたに通和散の買い物を頼んだ日の夜だよ。一夜にして、店の経営の男達は全員殺された。それも惨たらしい殺され方でね」

「……」

「最初に気付いたのは、客の見送りに出ていた女郎さ。悲鳴を聞いて裏庭に回れば、其処はもう血の海だった。誰が誰だかわからない程に細切れにされた男達は、結局最後までどの体が誰のものかなんてわからなかった。一夜にして男達が死んで…あんたも、その日から突然姿を消した。あたいはてっきり事件に巻き込まれたんだろうと思ってたよ。あんたの姉だって──」


 淡々とだが続けていた松風の話が止まる。
 その意図を悟ると、蛍は静かに頸を横に振った。


「知っています。姉の死は」

「…そうかい」

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