第22章 花いちもんめ✔
「見ないうちに随分と阿吽の師弟になったじゃねぇか。まさか弟を連れて鬼退治に来たなんて言わねぇよな?」
「それは俺も訊きたかったところだ! 君は何故此処に?」
煌びやかな額当てに、袖のない隊服。
背中には大きな双刀。鬼殺隊の恰好をしている天元に、問わずとも大方の予想はついた。
「俺はその鬼退治だよ」
「ふむ。此処に鬼が出るのか!」
「いや。それは今検証しているところだ」
「というと?」
「あー…元々は吉原で鬼の調査を進めてたんだが」
ぴくりと微かに反応を示したのは、杏寿郎の後方に立つ蛍だった。
視界の端で捉えながらも、天元は気付く素振りを見せず続けていく。
「あそこは鬼が身を潜めるには絶好の場所だ。大層な鬼がいるんじゃねぇかと睨んでな」
「とあれば被害者は出ていないということか?」
「ああいう場所は、死人や行方不明者なんて珍しくもない。それが鬼の仕業によるものだとしても、ただの事故として処理できちまう」
「成程」
「最初は俺単体で潜入捜査していたんだが、どうにも尻尾が掴めなくてな。俺より女が適任かと、嫁達を侵入させた」
「え、雛鶴さん達を?」
「まきをと須磨もな。連絡は定期的に取り合ってるから問題はない。その間、俺はその他の花街にも念の為に監視を撒きに来たって訳だ」
ぴょこんと天元の肩に飛び乗る先程の鼠に、成程と蛍も納得した。
忍獣である天元の鼠なら、監視役も務まるだろう。
「そしたら見知った派手な頭が二つ並んでるじゃねぇか。もしかしてと思ってな」
「そうか、偶然だった訳だな」
「で、お前らはなんで此処に? 観光…じゃねぇよな」
表の芸者屋が並ぶ花街ならまだしも、此処色町に千寿郎のような少年を連れて来るはずはない。
じろじろと観察するように見てくる天元に、蛍は居心地悪く竹笠を深く被り直した。
何かと勘の良い天元のこと。
蛍の過去にも、簡単に辿り着いてしまうかもしれない。
「俺達も此処に用事があったんだ。しかし手掛かりは掴めそうにもない。別を当たろう!」
「へえ? その用事ってなんなの」
「野暮用だ!」
「雑かよ」