第22章 花いちもんめ✔
互いににっこり笑顔を向け合いながらも、真逆の心中であることは手に取るようにわかる。
ぎりぎりと押し合う大小の手と手。
後ろでそわそわと不安そうに見てくるちんまりとしした子供に、成程と天元は掴んでいた蛍の手を解放した。
その名称を聞かせたくないのは、無垢な顔をした少年だ。
「ったく。随分平気そうにお天道さんの下を出歩くようになったが、中身はなんも変わっちゃいねぇな」
「それはどうも」
「褒めてねぇけど?」
まぁいいと肩を竦めて、切れ目の瞳が千寿郎を映す。
「それで、その煉獄にそっくりな坊主は誰だ? どう見たってお前の親族絡みだろうけど」
「うむ。話したことはあるが、会うのは初めてだったな。俺の弟の千寿郎だ」
「は…初めまして、煉獄千寿郎と申します。音柱様のお話は、兄からも度々伺っております」
「へえ。お前があの"千寿郎"か。想像していたよりチビ助だな」
「ち…っ」
「しかも煉獄に瓜二つじゃねぇか。兄弟でもここまで似ることは早々ねぇだろ、面白ぇ」
「おも…っ」
「つーことは…お前はあれだな、千坊だ。俺は宇髄天元。同じ柱である煉獄のよしみだ、特別に名前で呼ばせてやる。天元様でいいぜ」
「せんぼう…」
天元が放つ言葉の槍に、物の見事に打ちのめされていく。
その度にぴょこぴょこと跳ねる千寿郎の束ねた髪の尾を面白そうに観察していれば、ずいと目の前に瓜二つの顔が迫った。
「千寿郎に興味を持つのは結構なことだが遊ぶのは止めて貰おうか。俺の弟だ!」
「だから声デケェっつの…親交を深めてただけだろ? なぁ千坊」
「え…あ、はい。天元、様」
「音柱でいいぞ千寿郎!」
「様も要らないからね千くん」
「おい待てお前ら」
仁王立ちし通させまいとする杏寿郎と、千寿郎の前で背を向けて庇う蛍に、天元もつい真顔の突っ込みを入れてしまう。
年上で且つ格上の立場ともなれば、様付けで呼ばれても可笑しくないだろうに。