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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第22章 花いちもんめ✔



「所在地は調べたからわかっている。大きな街だから、幸いにも此処から列車一本で赴ける場所だ。もしかしたら与助という男も其処へ逃げ帰っているかもしれない」

「なんで…そこ、まで」


 静めた声で淡々と告げる杏寿郎からは、確固たる決意が感じ取れる。
 一度決めたことは易々と曲げない性格なのも知っている。

 しかし何故、と問いかけずにはいられなかった。

 今はもう記憶の片隅にしかないあの場所へ。
 何故、今。


「そこまで、と言い切れることか? 俺は俺の大切な人の姉君を殺した男を放ってなどおけない。必ず見つけ出して罪を償わせる。例え君が、それを望んでいなくても」


 淡々と告げる杏寿郎の表情に感情の起伏はないが、その瞳の奥底にはじりじりと燻るような炎が宿っていた。
 蛍に向ける欲とは全く異なる、黒炎のような灯火だ。


「休暇中は自由行動をお館様にも認められている。だが時間はないからな、明日朝一番にでも発つつもりだ。情報がなければ日帰りですぐ戻る。その間、蛍は千寿郎と家で──」

「わ、私もっ」


 望んでいない訳がない。
 姉を殺したあの男を、好きに野放しにさせておく気はないのだ。

 さくさくと話を進める杏寿郎を、止めるように強く手を握り返した。


「私も行く…!」


 もう二度と踏まないだろうと思っていた、花街の地。
 目を逸らし続けていた場所。

 其処にあの男が、まだ生きているのならば。

















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