第6章 柱たちとお泊まり会✔
二番手 ❉ 伊黒 小芭内
「いいか、ネタバレはするなよ胡蝶」
「わかりました、しませんよもう。伊黒さん、どうぞ」
「心配ない。話はすぐ終わる」
そう言うと、今度は伊黒小芭内が包帯を巻いた口元に蝋燭の炎を寄せた。
その頸に纏わりついている蛇の両目が、暗闇でぽつんと二つ光りを放つ。
弟が出来た
赤ん坊である弟の 毎日泣き喚く声は
耳障りで五月蝿くて
ある日 気付けばこの手で絞め殺していた
動かなくなった小さな肉塊を見て
怖くなった僕は 押し入れへと弟を隠した
数日後 何故か弟の肉塊は消えていた
先輩が出来た
いつも足でこき使っては いつも下に見てくる
その蔑んだ目が嫌いで
ある日 気付けばこの手で殴り殺していた
動かなくなった大きな肉塊を見て
怖くなった僕は 押し入れへと先輩を隠した
数日後 何故か先輩の肉塊は消えていた
恋人が出来た
見た目は綺麗だけど いつも化粧臭くて
褒めていないと すぐに癇癪を起こす
ある日 気付けばこの手で[[rb:嬲 > なぶ]]り殺していた
動かなくなったぐにゃぐにゃの肉塊を見て
怖くなった僕は 押し入れへと恋人を隠した
数日後 何故か恋人の肉塊は消えていた
母が死んだ
残されたのは 厳格な父親面ばかりする
[[rb:他所 > よそ]]からやってきた 見知らぬ男
ある日 気付けばこの手で斬り殺していた
動かなくなった血塗れの肉塊を見て
怖くなった僕は 押し入れへと男を隠した
数日後 何故か男の肉塊は消えなかった
数日後 押し入れの奥から異臭がするようになった
数日後 部屋の中に蝿が飛び交うようになった
一年後
吐き気をもよおす空気に 限界を迎えた僕は
押し入れを開けた
そこにあったものは──
「以上だ」
ふっと蝋燭の炎が静かに拭き消される。
淡々と話す伊黒小芭内の言葉に抑揚はなく、それが逆に薄ら寒く感じた。
だけど最後のオチが中途半端なような…。