第6章 柱たちとお泊まり会✔
一番手 ❉ 宇髄 天元
「じゃあ最初は派手に俺からだ。全員、耳の穴かっ穿ってよーく聞けよ」
静まる空気。
皆の視線が、天元の下(もと)へと集まる。
「これは江戸で起こった話だ──…とある屋敷に、お菊というそれは美しい娘がいた。お菊は屋敷の腰元(こしもと)。当主は美しいお菊を大層気に入って可愛がっていた」
派手と言う割には普通な出だしだ…でも声を沈めて意味深に語り出すものだから、つい聞き入ってしまう。
腰元って屋敷のお手伝いさんのことだよね…確か。
「当然、他の腰元達は面白くない。ある日お菊を困らせてやろうと、他の連中は屋敷に伝わる家宝の皿を」
「番町皿屋敷ですね」
「オチが丸見えだつまらん」
「待てオイ誰がネタバレしていいっつった待てオイ」
あ。
静まり返っていた重々しい空気が一転する。
というか皿屋敷って。
それ、すんごく有名な怪談の一つだったような。
殺されたお菊という幽霊が、井戸の中から皿を一枚ずつ数えて出てくるっていう…え、本当にそれ?
「ネタがわかり切ってて怖さなんて微塵もありませんよ」
「さっさと火を拭き消せ。話は終わりだ」
「はぁあ"ん!?」
胡蝶しのぶと伊黒小芭内の言葉にぷっつんきた天元が大声を出せば、同時にふっと目の前の蝋燭の炎が消える。
あ。
「……」
「さ、次ですね〜」
「ちょっ待て!」
「次は俺が話そう」
「まぁっ伊黒さんの怖い話? 面白そうっ」
「面白がっては意味がないぞ、甘露寺…」
言い出しっぺの天元の怪談は、まさかの一瞬で終わってしまった。
そそくさと次に移る周りに、こんな調子で大丈夫なのかと一瞬不安になる。
…訓練にもならないかもしれない…。