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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第6章 柱たちとお泊まり会✔



「きょうじゅろうは、できるの?」

「無論!」

「お前はそのでかい声で一発負けしそうだけどな」

「むっ」


 た、確かに。

 威勢よく頷いた杏寿郎が、天元の言葉にまたもや固まる。
 今日は沢山固まってるなぁと珍しげに見上げていたら、威勢よく上がっていた眉が下がった。


「時と場合で声量を使い分けることくらい俺にもできるぞ…だからそんなに見るな」


 大きな掌が私の顔に翳(かざ)される。
 触れはしないけれど、視界を覆うように…え、照れてる? 
 もしかしてそれ、恥ずかしがってるの?


「ご、ごめん。でも、ばかにしたりしてないよ」

「…そうか?」


 あ、やっぱり恥ずかしいところ見られたって思ってたんだ…。
 そんなこと、ないけどな。
 寧ろ…ちょっぴり、可愛いなぁ、とか…。


「わたしはうれしいけど。いろんなかおのきょうじゅろうが、みられるの」

「嬉しい…のか?」

「うん」


 直接言葉にするのはちょっぴり恥ずかしかったけど、私が嬉しいと自分も嬉しいと言ってくれた杏寿郎だから。
 私も嬉しいって伝えたら、杏寿郎のその恥ずかしさも緩和されるかな。

 ようやく顔の前に翳されていた掌が退いた。
 見えた杏寿郎の顔に笑って頷く。
 いつも見開いているような強い眼孔が、ぽけ、としたものに変わる。
 見開いているのはいつもと変わらないけど、いつものような力強さはない。


「…そうか」


 やがて凛々しい眉が下がって、くしゃりと笑われた。
 杏寿郎の年相応な笑顔。
 それも見るとなんだか嬉しくなるものだ。

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