第6章 柱たちとお泊まり会✔
「蝋燭の炎は自分の身代わりだ。それを話の終焉以外で消してしまったら、そいつの負けとなる」
出た身代わりの法則。
…蝋燭、爆発したりしないよね。
「負けた奴には勿論罰則がないと意味がない。訓練だしな」
それらしいことを言ってるけど本人は楽しんでいるようにしか見えない。
それでも組手の実践で、一度は私を殺そうとした男。
どんな罰則かと、覚悟をして耳を傾けた。
「一番ビビった奴は地味に一週間、不死川実弥におはぎの差し入れをすること。それが罰則だ!」
おはぎ…?
いや待ってそれ以上に重要な単語を聞いた。
しなずがわさねみ?ってあの不死川?
さねみって名前なんだ…初めて聞いた。
あの好戦的な性格にしては随分と綺麗な名前だ。
なんでそこにおはぎなのかわからないけど、果てしなく結びつかない単語同士に嫌がらせでしかない罰則だと気付く。
他の柱でも嫌がらせになるなら私なんかが差し入れしたら即刻頸を跳ねられそうな気がする。
というか跳ねられる。
絶対に行きたくない。
「なんだ? 蛍」
無言で挙手をしてみれば、すんなりと通された。
「もっとかるめのばつにしてください。それ、わたしにはしけいです」
「あ? 大丈夫だろ。お前には番犬がいるしな」
番犬?
天元の視線を辿れば、隣にいる冨岡義勇とぱちりと目が合う。
いつも感情の見えない目が、その時ばかりは一瞬何を言われたのかわからない、という表情を見せた。
「…俺は番犬じゃない」
「似たようなもんだろ。四六時中そいつに張り付いてんなら」
それは…確かに一理あるけど。
でもそこには真っ当な理由があるからで、そもそもおはぎの差し入れに一週間も付き添ってはくれないだろうし…やっぱり死刑確定な気がする。
「簡単なことだ、彩千代少女。怖がらなければいい。呼吸を等しく整え、何事にも動じない。その精神を手に入れるんだ」
そんな一抹の不安は、隣から届く力強い声に緩和された。
左を見れば、いつものきりりとした眉を上げて笑いかけてくる杏寿郎の姿。
同じにうつ伏せに寝転ぶ形で並んだのは初めてだけど、やっぱり杏寿郎の傍が一番落ち着いた。
…あっちの布団に入りたいな。