第3章 浮世にふたり
『その無念を晴らしたいか? 自分を死に至らしめる者を同じ目に合わせたいか?』
答える術など無い。
それでも私の思いを汲み取るように、その声は呼び掛けてくる。
『恨むなら、己の弱さではなくこんな浮世にした人を恨むといい』
『そうすればお前は強くなれる』
不思議な声だった。
声は一つだけなのに、あちらこちらから囁いてくる。
答える術など無い。
それでも、答えなんてとうに決まっていた。
『いいだろう』
消えていく灯火。
寒さももう感じない。
手足の感覚が失くなって、全てが無へと堕ちていく。
『お前に私の血を与えてやる』
──ぽたりと
雫が落ちる、音がした。
『強き鬼となれ。彩千代 蛍』