第6章 柱たちとお泊まり会✔
すると橙色の灯りの上に、ぬっと現れた銀髪男の顔。
下から照らす蝋燭の灯りで整った顔が不気味に映る。
「ここからが真の夜の時間だな」
そう笑う顔が一層不気味に…真の夜の時間?
「なぁに? 真の夜って」
同じく興味を持った蜜璃ちゃんが、枕を抱くようにして顔だけ起こし問い掛ける。
僅かに部屋をほの暗く照らす蝋燭を手にしたまま、天元は尚も不気味に笑った。
「大人数で寝泊まりするなら百物語が定番だろ」
百物語?…って、
「枕を合わせて怪談話など。柱のすることか」
蛇男の言う通り、百物語は蝋燭を灯して皆で一つずつする怪談話のこと。
まさかそんな言葉が天元の口から出てくるなんて。
「俺は派手を司る祭りの神だぞ。まだ夜も更けたばっかだってのに、このまま寝落ちるなんて果てしなく地味だ。つまんねぇ。ってことで地味でもできる祭りをする」
うわ出た自称神。
てか派手を司る祭りの神って。
本当に頭大丈夫かなって思う。
頭は回る癖に、変なところでネジが飛んでるんじゃないのかなこの忍者。
「ですが百物語は百人揃ってするものでしょう? 人数が足りてませんよ」
隣で今度は胡蝶しのぶが顔を上げて寄せてくる。
嫌がっていないところを見ると反対はしていないみたいだ。
寧ろ顔が生き生きしてるような…まさかの怪談好き?
「雰囲気が出りゃいいんだよ雰囲気が。いいか、ここに偶然にも蝋燭が七本ある」
なんで蝋燭が七本もあるの。
絶対偶然じゃないでしょ意図的でしょそれ。
「一人一本目の前に立てて、一人ずつ怪談話をする。終わったら一人ずつ蝋燭の火を消していく。よくある百物語の法則だ」
「しかし宇髄、これは仮にも稽古なのだが…」
「静と動の呼吸の訓練だろ。なら都合が良い。俺様独自の稽古を追加してやる」
あ、杏寿郎も起きてきた。
"稽古を追加"という言葉に反応した冨岡義勇も顔を上げたものだから、横になっていた体の向きが変わる。
雁字搦めに束縛されていた腕から解放されて、思わずほっとした。
横にはいるけど、さっきの羽交い絞めよりは断然いい。
これなら喜んで天元の祭りとやらにつき合おう。