第21章 箱庭金魚✔
「じゃあ千くんがくれたこの花束にも、意味はあったりするの?」
「あ…はい。一応」
「へえ。どんな意味? 知りたいな」
スターチスも、千日紅も、カスミソウも。
喜びや、愛や、祝福を意味するそれらは全て、蛍の婚約祝いを意味して千寿郎が選んだものだ。
そんな小さな花々に囲まれた、二本の白薔薇は。
「二つの薔薇は、世界にあなたとわたし。互いの愛を示すものなんです」
「互いの…」
「愛」
思わず並んで口にする蛍と杏寿郎に、千寿郎の顔がカァっと赤く染まる。
「一方通行ではない、ふたつ寄せ合う愛情の形です。兄上と、姉上の…その…ぁぃ、を、お祝いの形に、できたらと…」
俯きながら「愛」という言葉を限りなく小さな声で、ぽそりと告げる。
千寿郎のその言葉は、蛍の耳にしかと届いていた。
「千くん…」
蛍だけでなく、杏寿郎も含めた二人の未来を祝福するからこその二本の白薔薇。
まるで寄り添う二人のように花弁で触れ合う白薔薇は、色とりどりの花々に囲まれている。
それこそ沢山の者に、祝福されているかのように。
改めて小さな花束に込められた少年の思いを知る。
砕けるように柔らかな笑みを浮かべる蛍に、先程千寿郎が頸を傾げた陰りは見えない。
ほっと千寿郎が小さな胸を撫で下ろせば、むぅ、と観念したように杏寿郎が唸った。
「…千寿郎の花が一番だな」
「ふふ。だね」
「?」
つられて笑って頷く蛍に、千寿郎だけが一人また頸を傾げたのだった。