第6章 柱たちとお泊まり会✔
背後から羽交い締めにされた状態で共に横になっているから密着度が凄い。
覆われてる感が凄い。
頸に微かな吐息がかかって、ぞわりと鳥肌が立つ。
思わず抜け出そうと身動げば、耳元でぼそりと。
「下手なことはするな」
更にぞわりと背筋が凍った。
下手なことしてるのはそっちだから!
と言いたいのに言えない。
理不尽過ぎる。
「冨岡さん、寝違えて潰したりしたら駄目ですよ。小さな体なんですから、プチッといきますよ。プチッと」
私は蚊か蝿ですか。
そして期待を込めた目で言わないで下さい。
天元の言ってたサドって言葉、確かに胡蝶しのぶにぴったりかもしれない。
「その前にそいつが既に死にそうだけどな」
「むぅ…大丈夫か? 彩千代少女」
大丈夫じゃない。助けて下さい。
そう思いを込めて杏寿郎を縋るように見れば、うむと返される。
え、伝わった?
腕組みを解き、きりりと眉を上げた杏寿郎が進み出た。
「冨岡よ! やはりその体制はどうにも賛成できな」
「じゃあ代わりにお前がするのかアレ」
「っ」
威勢よく出てくれたのに。
ニヤニヤとからかうように天元が告げた途端、杏寿郎の体がまたもやぎこちなく固まってしまった。
「蛍の為の訓練だって言ったのはお前だろ。そして今回は冨岡の先制勝ちだ。諦めろ」
「…む…」
『悔しかったら次回は勝ち取れるようにしろよ』
杏寿郎の耳元で告げる天元の後の言葉は小さくて拾えなかった。
そして天元に何かを告げられた杏寿郎の顔が下がっていく。
落ちるような杏寿郎の姿勢とは裏腹に、始終ニヤけてる天元はこの状況を楽しんでいるらしい。
…嫌な忍者だ。
「てことで、お前らさっさと布団に入れ。明かり消すぞ」
合宿所の教官のような台詞で、天元が周りを急かして天井から下がっている電灯の紐に手を伸ばす。
ぱちりと音がして途端に周りが暗く変わった。
余り見たことがないその電灯の機能をまじまじ見上げていれば、ほわりと周りが明るくなる。
…明るく?
何かと目を向ければ、それは一本の蝋燭だった。
真っ暗な広い部屋の中でほわりと小さな橙色(だいだいいろ)の光を灯している。
…なんで蝋燭の光が?