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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第21章 箱庭金魚✔



「それで一番出汁と二番出汁どちらを使うの?」

「これは一番出汁を…ふ、ふ」

「?」


 くるりと振り返り今度はこちらを覗いてくる蛍に返事をすれば、つい口元が綻んでしまった。
 高揚しているが故に、笑い声が漏れてしまったと言っても過言ではない。


「何?」

「いえ…っ」

「いえって顔じゃないよね。なぁに?」

「ふふ…っすみません。やっぱりその被り方が、おかしくって」


 見た目と反して至極真面目な顔で料理を訊いてくるものだから、笑ってしまったのだ。

 現在蛍の頭には、畑仕事や料理中に手拭いで頭を覆う頬被りがしてある。
 それならば千寿郎も同じ頬被りを頭にしているが、蛍の被り方は独特だった。

 すっぽりと頭を隠すように被せただけでなく、顎の下で結び目を作り顔全体を隠す様は、まるで絵本に出てくる泥棒の頬被りのようだ。


「さっきも言ったけど、これは万が一顔を陽に焼かれないようにする為の対応で、致し方なく…」

「ふふふっ」

「聞いてるかな? 千寿郎くん」

「はい、存じております」

「鬼って色々大変なんだからね。なんならこの台所の窓全部布で覆いたいところだけど、そこは余所様の台所だからぐっと我慢して、健気にこう…聞いてるかな千寿郎くんっ」

「ん、ふふっはいっ」


 普段ならば心配をするところ。相手が蛍となると、どうにも空気が緩んでしまう。

 鬼である蛍を家族として受け入れると決意した時から、千寿郎の中で彼女の線引きは消えた。
 そうして一人の女性として見ると、今まで出会ってきた女性とは違い蛍は随分と親しみ易いものだった。

 煉獄家であるが故に、名家の出や位の高い女性との関わりが多かった所為だろうか。
 蜜璃はまた異なる女性ではあったが、全面的に異性を意識させるような体系や身形は、目線を何処に向ければいいか偶に戸惑っていた。

 比べ、蛍に過度な露出はない。
 女性としての品を残しつつも、時に子供のように目線を低くして関わってくる蛍には、変な緊張も構えも消えてしまう。

 鬼とはどういう生き物なのか。朝食作りの合間に好奇心のままに尋ねれば、雑談のようにすんなりと明るく答えてもくれた。
 頬被りで頭を守る重要さも、そこで力説されたのだ。

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