第6章 柱たちとお泊まり会✔
「ということで、体を休めること! それが本日の稽古だ!」
「…あの、それなら」
「なんだ?」
杏寿郎らしい休息の求め方に恐る恐る挙手をしてみる。
休ませてくれるのはありがたい。だけど私も気になっていたことがある。
「それなら杏寿郎も私の師範として、体を休めることを実践して下さい」
「む?」
柱の仕事がどんなものか細かいことはよく知らない。
でも私の訓練に夜通しつき合ってくれて、尚且つ昼間は昼間で柱の仕事をしてる杏寿郎は一体いつ寝ているのか。
そんなことを今日ふと考えていた。
下手したら寝ていないんじゃないか。
杏寿郎のことだから、あり得そうで怖い。
「休みを実践、か?」
「最後に寝たのはいつですか」
「睡眠なら本日既に取っているぞ」
「何時間寝ましたか」
「……時間」
あ、すらすら応えていた杏寿郎の言葉が止まった。
やっぱり何時間も寝ていないんだ。
それは睡眠じゃなくて仮眠です。
それは体を休めたことにはなりません、ただの一時休憩です。
「人間の三大欲求に入るくらい睡眠は大事なものなんです。気を付けていないと、身体にも精神にも支障をきたすから」
私も人間だった頃、姉の面倒を見つつ食事代と薬代を稼いでいた人生で一番忙しかった時。
働き詰めで睡眠を疎かにして、半ば倒れかけたことがあるからわかる。
今は鬼だから色んな感覚が人とは違うけど。
相手は柱だから私より遥かに凄い人間だけど、それでもあまり無理はして欲しくない。
日頃、私の為につき合ってくれてる杏寿郎だから尚更。
「ということで杏寿郎も寝て下さい。それなら私も休みます」
ぺこりと頭を下げて頼めば、ふぅむと相槌が聞こえた。
あの相槌は何かしら考え込んでいる時のものだ。
顔を上げればやっぱり顎に手をかけて考える杏寿郎が見えた。
かと思えば、うむ!と頷きこちらを見てくる。
よかった、納得してくれたみたい。
「そんなところに目を付けるとはな! 彩千代少女、感心したぞ!」
…うん?