第20章 きみにより 思ひならひぬ 世の中の
「蛍…」
快楽と高揚で頭が痺れるまま愛しい名を呼ぶ。
さり、と親指の腹で髪を撫でれば、陰茎を口に含んだまま蛍の頭が擦り寄った。
甘える小動物のような仕草に、きゅうと胸の奥が愛おしさで弾む。
さわりさわりと頭を撫でれば気を良くしたのか、蛍の奉仕にも熱が入る。
熱心に頭を前後に揺らして、陰茎の熱を高めていく。
「ぅ、く…っ」
何をも見通すようにいつもは見開いている双眸を細めて、杏寿郎は切なげに吐息を落とした。
ひとつではないのに、ひとつになっている気がして。もっとその柔く蕩けるような蛍の中にいたい。感じていたい。
そのままに自然と腰が揺れた。
「んぶ…ッ!?」
「! す、まん…ッ」
無意識に喉奥を小突いていた。
不意を突かれた蛍の嗚咽に、はっとして腰を退く。
その前に、蛍の腕が杏寿郎の腰に絡み動きを止めた。
「蛍…? ぅ、あっ」
大丈夫とでも言うかのように、更に奥へと自ら呑み込んでいく。
頭を捩じり、喉を開けて、根本まで呑み込んだ太い陰茎を涙ながらに受け入れた。
長いストロークで、先端から根本までゆっくりと扱いていく。
細めた喉で亀頭を挟んで、苦しげに寄せた眉の下の瞳は涙で濡れた。
「ふ、んく…っふ…っ」
飲み込めない二人の混ざり合った体液が、顎を滴り落ちていく。
それでも律動を止めることなく速めていく蛍に、杏寿郎は砕けそうになる腰をどうにか支えた。
「は、ぁ…っほたる…ッ駄目、だ…それ以上は…ッ」
「んん…ッ」
「出てしまう…ッ口を、放せ」
きゅうきゅうと締めてくる喉奥は、まるで蛍の蜜壺のようだ。
しかし時折吸い上げてくる唇の吸引は、蜜壺にはなかった刺激で腰から崩れ落ちそうになる。
高揚した表情でそれでもどうにか止めようとすれば、尚の事蛍は熱く舌を絡めた。
深く咥え込んだまま、硬くした舌先でカリを引っ掛け裏筋をなぞる。
ちゅぅっと催促するように吸い上げられ、杏寿郎の腰がびくんと跳ねた。
「ぅ…!」
ほとばしる解放感。
気付けば蛍の頭を掴み、熱い欲望を小さな口に放っていた。