第20章 きみにより 思ひならひぬ 世の中の
最初は優しい口付けだった。
天を仰ぐ亀頭にひとつ。太い竿にひとつ。根元からふぐりへとひとつずつ。
触れるか触れないかの境を掌で撫でていきながら愛情を落としていく。
赤い舌を見せてぬるりと鈴口を舐めては、口内に溜めた唾液をとろりと垂らす。
てらてらと唾液で光る陰茎を両手で包むと、ゆっくりと扱いていく。
白い手が前後に優しく擦る度、にちゅりと粘着質な音が立つ。
まるで甘いキャンディバーを舐めているかのように、ねとりと絡みつく舌。
鈴口から溢れる先走りを絡め取り、余すことなく竿もカリも濡らしていく。
熱い視線を陰茎に向けながら、蛍の目は時折ちらりと見上げてくるのだ。
目が合えば、ほんの僅かに目尻が柔らかく緩む。
唾液と先走りで濡れた口元の艶やかさとのギャップに、くらりと杏寿郎の頭から湯気が立つようだった。
「っは…」
「ん…っきもち、いい?」
気付けば息は上がっていた。
陰茎の根元に顔を埋めて、ちゅくちゅくとふぐりへと吸い付きながら上目遣いに蛍が問いかけてくる。
その姿だけで、血液が一気に下半身へと巡るようだ。
「っああ…」
それだけしか告げられなかったが、蛍にはそれだけで十分だった。
嬉しそうに弧を描いた唇が開く。
「じゃあ…もっと、きもちよく、ん…なって」
ぬぷりと、濡れた唇に呑み込まれていく太い陰茎。
全部は入りきらないのか、ふぅふぅと息を漏らす蛍の目がじんわりと濡れる。
途中まで呑み込んだ陰茎の裏筋に舌を這わせると、頭を退く。
「く…っぅ、」
ぬぷり、じゅぷりと、いやらしく粘膜が擦れる音が響く。
舌と口内を使って扱いていく蛍の奉仕に、杏寿郎の食い縛った口から微かな嬌声が漏れた。
温かく包み込むような蛍の口の中は、蕩ける程に気持ちがよかった。
ちゅぷちゅぷと唾液を絡ませ舌を這わせ見上げてくる姿にも、射精感が昂る。
思わずくしゃりと指を髪に絡め頭を掴む。
熱く視線を向ければ、乱れた髪の隙間から見上げる瞳が、月明かりにつるりと濡れて光ったように見えた。