第19章 徒花と羊の歩み✔
自分では伺い見られもしないところを、責められていることだけが理由ではない。
杏寿郎の目が捕えて離さないからだ。
灯を宿した射抜くような双眸に熱を注がれて、流れ込むように蛍の体がかっと熱くなる。
「だから、やめ…っぁ、」
「やめていいのか? 気持ちいいだろう?」
「そ、んなこと…っ」
逃げ出そうと腰が浮く。
膝から身を引き前屈みに蛍が体を倒せば、追うように杏寿郎の体が覆い被さってきた。
撫でるような優しさばかりの愛撫が、動きを変える。
「ん、くぅ…っ」
「こんなに俺の指を締め付けてくると言うのに?」
蜜壺の形を覚えているかのように、更なる挿入を果たした指が、知った顔で蛍の中を掻き回す。
ようやく与えられた強い刺激に、堪らず蛍は四つん這いのまま畳に頭を突っ伏した。
「快感が嫌いな訳ではないだろう? 感じることが、いけないことなどないぞ」
「は、ぁっ」
「背徳感など不要だ。大丈夫、俺しか見ていないから」
蜜の溢れた秘部だけではない。
同じに後孔にも潜り込んだ指が、ゆっくりと前後に内壁を擦り上げてくる。
不慣れな刺激はじんじんと奇妙な響きを与え、背中に密着する大きな体にもまたじんと頭が痺れた。
杏寿郎が"大丈夫"と言えば、不思議とそんな気がしてしまう。
低く甘い声で吹き込まれるように囁かれ、蛍は尚も肌を赤らめた。
「ほうら」
「ぁ、ぁ…っん…っ」
「気持ちいいな。蛍」
今度は確実に快楽の底へと落としにくる、蜜壺を掻き乱す指。
ゆっくりとだが律動を止めることなく、後孔の中を刺激してくる指。
太くも長い杏寿郎の指は、蛍では届かないところまで暴き愛でてくる。
背徳感など不要と言うが、その背徳感が尚も後押ししてくるのだ。
いけないとわかっていて、されるがままに溺れていくことへの快感。
ぞくりぞくりと泡立つ背に自然と腰は上がり、漏れる声が高くなる。
「何も悪いことなどない。俺しか知らない、蛍の姿を見せてくれ」
まるで媚薬の如く。
流し込まれる問いに、はくりと熱い息が零れる。
「気持ちいい、だろう?」
気付けば濡れた唇を開いて、答えを求めていた。