第19章 徒花と羊の歩み✔
「気持ちよくなれないのなら、別の手を打ってみようと思ってな」
「っそこ、は、そういうところじゃな…っ」
「そうか? ここに触れると蛍の中もひくつく。何も感じない訳ではないだろう?」
口調は変わらず優しいが、蛍の下半身を弄る手は執拗にそれを止めない。
蜜壺の奥を優しく撫でながら、もう一方の指は蛍の背後を辿り──後孔を撫でていた。
男女の交わりの中で普通なら使用するところではないものだ。
ただその感触を、蛍は知っていた。
月房屋で女郎として働いていた時に相手をした客は、その数だけ性癖も千差万別だった。
故に偏った嗜好を持つ者も多い。
身体を甚振ることが好きな者もいれば、逆に甚振られることが好きな者もいた。
そして、男にも女にも共通する後孔を愛でることが好きな者も。
「ぁ、ぅ…っ」
優しく撫でるだけだった指先が、くにりと浅く後孔に潜り込もうとする。
今までにない羞恥に顔をより赤らめると、蛍は溜らず頸を捻り振り返った。
「も、もうやめ…っ」
「ん?」
(っ凄い眩い目してる…!)
間近で迎えた杏寿郎の目は、それはもう爛々と輝き蛍を食い入るように見つめている。
南座の前で歌舞伎の演目を選んでいた時のようだ。
「な…なんで、そんなに楽しそうなの…」
「いや。予想以上に蛍の反応がよくてな」
「…っそ、れは」
まさか、経験済みだからとは言えない。
だからと言って否定もできず口籠る蛍に、杏寿郎は口元の笑みを深めた。
「後ろを触ると、蛍の中がより潤う。…感じてくれているのか?」
「っぁ」
秘部から滴る愛液を指に纏い、後孔を優しくつつく。
滑りのよくなった指がくぷりと細やかな侵入を果たすと、蛍の肩がひくりと跳ねた。
「本当に、どこもかしこも性感帯だな…君は。いやらしくて目が離せなくなる」
「…っ」