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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第19章 徒花と羊の歩み✔



「私、鬼と話してみたいと思ったことはあるけど、仲良くしたいと思ったのは蛍ちゃんと禰豆子ちゃん以外にないから吃驚しちゃった。蛍ちゃんの考えることって凄いわねっ」

「そんな大袈裟なことじゃないよ。仲良くって言うより、私が…同志を見つけたいだけかも、しれないし」

「同志?」

「仲間、みたいなものかな。私は鬼殺隊にいるけど、人じゃない。鬼だけど、人を喰べて生きてもいない。今の生き方が間違っているとは思わないけど…だからせめて、同じような道を歩もうとしてくれる鬼を見つけたいだけなのかも」

「それなら禰豆子ちゃんは? あの子も蛍ちゃんと同じじゃないの?」

「禰豆子は、特別だから」


 幾度も日輪刀に体を串刺しにされ負傷した身であっても、不死川実弥の稀血を欲しなかった。
 眠ることで飢餓を抑えることのできる、人の味を知らない鬼血術を扱う鬼。

 蛍では行きつくことのできなかった所に立っている鬼だ。

 そんな禰豆子の姿を見ていると、眩しい光を見つめている気になる。
 そんな鬼もいるのだと希望に胸が満ちるのと同時に、自分では辿り着けない姿だと羨望もまた感じるのだ。


「だから探しているのかも…私でも、私だから、できることがもしあるならって。…ただの我儘かもね」


 地に落ちていた視線を上げる。
 控えめに笑みを浮かべる蛍に、蜜璃はきゅっと唇を噛み締めた。


「我儘でもいいと思う」

「…蜜璃ちゃん?」

「だって蛍ちゃんはずっと一人で耐えてきたじゃない。我儘なんて言わずに、鬼としても私達鬼殺隊の命に従って。そんな蛍ちゃんがようやく出してくれた我儘なら、私はとても嬉しいわ」


 ずいと寄せる顔は、蜜璃の高まる思いも相俟ってか。勢いのまま両手を握られ、きょとんと蛍の目が瞬く。


「それにあの煉獄さんを動かした程のことなんだから。そこに蛍ちゃんの強い志があったから、煉獄さんも認めてくれたと思うの」

「杏寿郎は…器が、すごいから」

「それは違うわ!」

「わっ」

「あ、煉獄さんは確かに器がすごく凄ーく広い人よねっそこは否定しないけど。でも、自分の度量だけで人を認めたりはしないからっ」

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