• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第18章 蛹のはばたき✔



❉  ❉  ❉

「では、世話になった」

「いえ、いえ。私らの方こそ。毎度ながら、見事な鬼退治どした」


 杏寿郎により、無事お稲荷様へと油揚げを献上した翌朝。
 早朝一番の列車を待つ為、杏寿郎と蛍は藤屋敷を後にすることとなった。

 朝焼けの中。玄関先まで見送る藤の主に、杏寿郎と蛍が先の地を踏む。


「後藤さんも、また。寂しくなるけど」

「本部でまた会えるさ。それまで蛍ちゃんも怪我し過ぎないようにな。炎柱様、よろしくお願いします」

「うむ! 君にも世話になったな」

「オレは隠としての仕事をしただけですよ」


 杏寿郎と蛍は次の任務へと直接赴く。
 後藤は一度本部へと戻り、再び任命される別任務へと向かう。

 剣士と隠は各々現場にて合流することが多く、常に一定の相手と組む訳ではない。
 同じ任務に赴けるとばかり思っていた蛍は、その事実に残念そうに肩を落とした。

 そんな蛍の反応に、苦笑ながらも満更でもなさそうに後藤は笑う。


「ぇ、炎柱様。また、京に寄ってくださいねっ」

「うむ!」

「オレ、もっと鬼のこと勉強します。もっと美味しいモンとか観光案内できるようにしますっ」

「それは楽しみだな! ぜひ、また蛍と楽しませてくれ」

「はいっ」


 満面の笑みを浮かべた杏寿郎の手が、ぽんと清の頭を撫でる。
 途端に幼い頬は高揚し、きらきらと目を輝かせて少年は声を弾ませた。

 杏寿郎の手が離れれば、遠慮がちに見上げた清の目が隣りにいた蛍と重なる。
 まさかこちらを向いていたとはと、縦に割れた緋色目に慌てて逸らした視線は地へ落ちる。
 しかしその口は、逃げるようなことはしなかった。


「…あんたも炎柱様が認めはった、継子なんやし。…鬼退治、お疲れ様、でした」

「ぁ。うん」


 途切れ途切れながらも礼を口にして、頭を下げる。
 まさか清にそんな態度を向けられるとは思ってもおらず。
 ぱちりと目を瞬きながら、蛍も慌てて習うように頭を下げた。

/ 3463ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp