第18章 蛹のはばたき✔
「甘い考えなのはわかってる。厳しい道なのもわかってる。でも、私は鬼だから。どんなに足掻いても、真似ても、大切な人に認められても。人間と同じには、なれない」
掛襟を掴んでいた手に力が入る。
「それでも。鬼である私が、此処に立っている意味があるのなら」
後には退かなかったが、前にも踏み出せなかった。
縫い付けられたように動かなった足を、その時初めて。
「…も、し」
一歩、踏み出した。
「私の考えが、鬼殺隊にそぐわないなら…切り捨てても、いい」
「──!」
唇を噛み締める。
これだけは口にしたくなかったと声は萎んだが、己を止めるなと胸の内は熱くなる。
背を押したのは、己を疑うなと諭した杏寿郎の言葉だ。
「資格がないなら、継子も…辞める、から」
震える拳を強く握りしめた。
臆するな、震えるなと、自分を叱咤して。
「それでも、可能性があるなら、抗いたい。例え結果が出なくても、自分に見て見ぬフリをするより、余程いい。…そこで私が、人喰いに染まってしまうなら…その時は、杏寿郎に斬られても、いい。ただそれまでは、」
きつく眉を寄せて、歯を食い縛って。
腹を据えるようにも、泣きそうにも見える顔で、蛍は告げた。
「独りの道でも、自分の道を、歩んでみせる」