第18章 蛹のはばたき✔
甘い甘い、華響の花とは全く異なる人工甘味。
ん、と一息ついた後、蛍は力んでいた口元を緩ませ笑った。
「甘くて、美味しい」
蛍の破顔に嘘はない。
周りの空気に呑まれるように見つめていた夫婦が、途端に安堵の声で笑う。
「なんや、あてらがほっとしたわぁ」
「カキ氷が苦手なんかと思うたわ」
「あはは、ごめんなさい。カキ氷なんて久しぶりで、つい感極まってしまって」
「ほんに? 遠慮なんかせんと、たんとお食べやすな」
「ならば俺も貰おうか!」
「兄はんはほんまよーけ入るなあ!」
真夏の気候を吹き飛ばすような賑やかさに、屋形船が揺れる。
蛍もまた笑顔を残したまま、夏の風物詩を前にゆっくりと息をついた。
「蛍」
「ん~」
「大丈夫か?」
「…だいじょばない…」
その後、十分と経たず撃沈した鬼が一体。