第5章 柱《弐》✔
「随分とまぁ可愛い仔猫になったもんだな」
「ぅ…ッ」
「だがこれで終いだ」
襟首を掴む手の力が増す。
袖を締められ頸が締まる感覚に、蛍は苦しげに呻いた。
この体の変化は奇襲でこそ役に立つ。
見破られてしまえば、一巻の終わりだ。
ちり ん
風情を持つ、小さな音色が二人の耳に届いた。
聞こえた先は天元のベルト。
同時に向けた二人の目が捉えたのは、揺れる風鈴。
蛍が亀裂を入れたベルトが時間差で限界を迎えて、ぷつりと繋ぎを断ち切ったのだ。
(──あ)
ちりん、と可憐な音を慣らして風鈴が落下する。
どんなに激しい動きをしていても、風鈴に圧が掛からないよう器用に体制を変え戦っていた天元。
しかしその風鈴が手元を離れてしまえば、何もかもが無意味となる。
『落として割ったりすれば、呆気なく爆発するからな』
数時間前の天元の言葉が、蛍の脳裏を走る。
突然の出来事に驚きを隠せない二人の前で、地面にぶつかった風鈴はカシャンと儚い音を立てた。
薄い硝子に、ピシリと罅が入る。
ドォンッ!!!
カッと強い光が差した瞬間、強い爆発が二人を襲った。