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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第17章 初任務《弐》



「蛍が京の都に興味を持っていたのでな! 折角だからこの機に観光にでも連れて行こうかと!」

「はぁあ!? 観光ォ!?」


 二度目は低い地声ではなく高い罵声。
 冷静ではいられなかった。


「何言ってんスか! こんな真夏日に! 蛍ちゃんだって病み上がりで観光なんて楽しめないでしょう! つかそもそも鬼には日光浴も自殺行為だわ!!」


 本来、後藤は隠の中でも空気の読める男である。
 己の可愛さも余って、自分より身分の高い相手に暴言など吐きはしない。
 しかし大事なことを見逃せない時は上も下も関係なく己の意志を貫ける。
 その後、後悔することも多いのだが、人として譲れない時は確かにある。

 正しく今がその時だ。


「今すぐ部屋ん中入って下さい! 必要なモンがあればオレが運びますんで!」

「それはありがたい! がしかし不要だ!!」


 蜜璃やしのぶであれば後藤に耳を貸しただろう。
 しかし相手は剛毅果敢(ごうきかだん)な炎柱。


「君の意見も尤もだ! だがこれは蛍と納得し合って出した結論! 譲る訳にはいかん!!」


 後藤の意見を汲みながらも決して頸を縦に振ろうとはしない。


「漢がここぞと決めたことをおいそれと曲げる訳にはいかない! そこを退いてもらおう!!」

「なんか恰好良い感じのこと宣ってますけど観光言いましたよね! 観光っスよね!? 遊びで鬼を連れ出すんじゃねぇええ!!!」

「むぅ! 確かに!!!」


「…あ、あの」


 飛び交う罵声と罵声。
 今にも血管が千切れそうな後藤に対し、杏寿郎は常に笑顔を称えているが声の圧も大きくなっていく。
 驚き唖然と二人を見守ることしかできない清の隣で、一歩踏み出したのは話題の問題となっている人物。
 自分が原因なら自分が止めるしかないと、片手を挙げた蛍だった。


「私、大丈夫です。京都、確かに見て回りたかったし。日光慣れの訓練とでも思えば…」

「なんだ日光慣れ訓練て! ただの自滅行為だろ! 人間に炎の中散歩しろって言ってるようなもんだぞ!!」

「成程! 炎上した道での走り込みならしたことがあるぞ!!」

「炎柱様は口挟まないで下さいややこしくなるんで!!!」


 それでも静めようにも静まらないのは、高らかに笑う杏寿郎が斜め上へと走る所為か。

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