第17章 初任務《弐》
「な…なん、で」
からからと乾いた喉に張り付く声。
ようやく絞り出した蛍の思いは、華響へと向けられた。
「不必要な殺生はしないって言ったのに…!」
「 空 腹 を 感 じ タ か ら 食 デ 満 た シ た 。そ れ ダ け の こ ト だ 」
「でもその人は華響を奥さんだと思って…ッ華響だってこれ以上酷いことを言うなって」
「 だ か ラ 望 む べ キ 所 に 向 か ワ せ て ヤ っ た ン だ ろ ウ ? 」
「え…?」
「 亡 き 妻 二 会 い た ガ っ て イ た 。だ か ラ 同 じ 所 に 送 っ テ や っ た 。寧 ろ 感 謝 サ れ て も イ い く ら い ダ 。妾 に ハ 喰 イ 損 だ っ タ が 」
腹は満たされても味は満たされなかったのだろう。
不満げな顔で腹を擦る華響に、 蛍は拳を握りしめた。
「本当に…死にたかったのなら、奥さんの後をすぐに追ってたはず。…華響がしたのは、ただの人殺しだ」
「 ほ ウ ? 妾 に 生 死 ヲ 説 く か 」
「本当に死を望んでいたのなら、抗ったりしなかったはず。あれは、無理矢理命を奪っただけだ」
「 ホ う 。随 分 と 偉 そ ウ な コ と を 」
強い蛍の視線を受けながらも、飄々と笑う華響は何処吹く風。
「 腹 が 減 っ た ラ 飯 を 食 ウ 。そ レ が 万 物 の 理 ダ ろ う 。妾 も 生 き る 為 二 や っ た こ ト 。そ れ ヲ お 前 が 否 定 で キ る ノ か ? 」
「…言っている意味は、わかる。でも納得はできない。華響は美しいものしか興味がないと言った。ならそれは食事じゃない、ただの殺しだ」
それでも頑なに姿勢を崩さない蛍に、説き伏せられないと悟ったのか。華響の口元から笑みが消えた。
「 ふ ン 。所 詮 は 人 間 に 飼 い 慣 ラ さ れ タ 小 鬼 。脳 味 噌 ま デ 莫 迦 に サ れ た カ 」
「なんとでも言えばいい。私には私の生きた道がある。華響の知らない人間を知っている。私の頭は覗けても、杏寿郎のことを何も知らない貴女に、何を言われても痛くなんかない」