第17章 初任務《弐》
「珠は軽かったのだろう? 近いうちに成就するかもしれないな」
「そうかなぁ。私と杏寿郎なら、大概の石は軽く感じるんじゃ…」
「軽く感じるのは、切磋琢磨し己を磨き上げた結果だろう。努力が成就の一歩となる」
「…成程」
「うむ!」
にっこりと朗らかに笑う杏寿郎に、つられて蛍の顔色も明るく変わる。
杏寿郎の傍にいると、不思議とその前向きさに染まるのだ。
振り返り、今一度灯籠の上の珠を見る。
信仰心などないが、それでも来てよかったと思えた。
なんの変哲もない石一つに、思いを馳せられるくらいには。
(──ん?)
その目が、ふと瞬いた。
なんの変哲もない珠の石。
そう思っていたものに、普通ではないものを見たからだ。
それは残り香のように。
珠の側面をふわりと揺らいで消えていった。
(あれは──…)
見覚えのある色。
「この調子で行けば、日が沈む前に稲荷山の頂上まで辿り着きそうだな。一度上から全体の把握を……蛍?」
「……」
「どうした。何か見つけたのか?」
じっと目を凝らしていた視線をずらして、杏寿郎へと向き直る。
もう一度珠へと視線を移し、もう一度杏寿郎を見やる。
「なんだ?」
「…かも」
「む?」
何度も視線を往復させる蛍に、更に頸を傾げる杏寿郎。
その傾く顔を今一度見上げて。
「見つけた、かも」
蛍はぽつんと、呟いた。