• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第17章 初任務《弐》



「珠は軽かったのだろう? 近いうちに成就するかもしれないな」

「そうかなぁ。私と杏寿郎なら、大概の石は軽く感じるんじゃ…」

「軽く感じるのは、切磋琢磨し己を磨き上げた結果だろう。努力が成就の一歩となる」

「…成程」

「うむ!」


 にっこりと朗らかに笑う杏寿郎に、つられて蛍の顔色も明るく変わる。
 杏寿郎の傍にいると、不思議とその前向きさに染まるのだ。

 振り返り、今一度灯籠の上の珠を見る。
 信仰心などないが、それでも来てよかったと思えた。
 なんの変哲もない石一つに、思いを馳せられるくらいには。


(──ん?)


 その目が、ふと瞬いた。
 なんの変哲もない珠の石。
 そう思っていたものに、普通ではないものを見たからだ。

 それは残り香のように。
 珠の側面をふわりと揺らいで消えていった。


(あれは──…)


 見覚えのある色。


「この調子で行けば、日が沈む前に稲荷山の頂上まで辿り着きそうだな。一度上から全体の把握を……蛍?」

「……」

「どうした。何か見つけたのか?」


 じっと目を凝らしていた視線をずらして、杏寿郎へと向き直る。
 もう一度珠へと視線を移し、もう一度杏寿郎を見やる。


「なんだ?」

「…かも」

「む?」


 何度も視線を往復させる蛍に、更に頸を傾げる杏寿郎。
 その傾く顔を今一度見上げて。


「見つけた、かも」


 蛍はぽつんと、呟いた。











/ 3624ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp