第17章 初任務《弐》
列車内では鳥類を連れ歩くことはできず別行動となったが、必要であれば何処からともなく飛んでくる。
鬼殺隊の為に鍛え上げられている鴉達は弱音も吐かない。
ただ役割はしっかり果たすものの、未だその態度は素っ気ないままだった。
「胡蝶に訊いたら、色んな隊士の鎹鴉を転々としていて名前は付いていなかったって。その時は幼名があるのを知らなかったから、つい付けちゃったけど…政宗は、嫌がってるみたいで」
「ふむ。俺の知るかの独眼竜は、敵に回すと恐ろしい武将であったが、反面肉親に対する情は厚かったと聞いている。同じ男として一目置ける者だ。十分立派な名だと思う」
「そう、かな」
「うむ! 食べられる時に食べておかねば、いざという時に力が出せないぞ。政宗!」
串団子を差し出してくる杏寿郎に、流石に相手が柱では無視はできなかったのか。ちらりと向いた隻眼が、興味なく団子を見る。
そして徐に羽を広げるとぱくりと団子を咥え、瞬く間に飛び上がった。
「わ…っ」
高い空を舞い上がる姿からして、簡単に戻る気はないらしい。
だがどうやら団子を食させることは成功したようだ。
「私の手からご飯なんて食べたことないのに…なんで杏寿郎の言うことは聞くかな。差別だ、鬼差別」
「隊士を転々とした理由は恐らくあの性格にあるのだろう。それでも鬼である蛍に就いたということは、それだけ蛍を認めているということだ。政宗という名も本当に嫌がっているなら、沈黙だけでなく否定もするはずだ。自信を持て!」
「あんな塩対応なのに? いまいち自信持てない…」
「根気強く相手をしていれば、いずれ心を開いてくれるはずだ。要もそうだった!」
「えっ要、昔は今とは違ったの?」
「最初は政宗のように感情を全く見せてくれなくてな! 要のことが知りたいとあれこれ問えば、煩いと口を啄まれた!」
「あ。それは想像つくかな。うん」
「俺が不甲斐ない姿をしていると、叱咤するように髪や耳を啄まれたこともあったな!」
「あ。それは意外かも…不甲斐ない杏寿郎って」
「故に蛍!」
「はい?」
「君も立派な鬼殺隊の一員となれば政宗に認められるはずだ! 腹拵えも終わった。この先、君ならどうする?」
「え」