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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第17章 初任務《弐》



「大丈夫ですか? 結構大きいですけど…」

「っは、はい」


 蛍が歩み寄れば、男の体が緊張を走らせた。
 柱の荷物を預かっているからではない。
 その目は、緊張と微かな動揺を含めた色で蛍を見つめていた。


(あ…そうか、)


 自分が鬼であることを、この男は知っているのだ。

 〝炎柱の継子は鬼である〟

 その情報は、鬼殺隊には伝えるべくして伝わっているもの。
 その鬼殺隊を支える藤屋敷の者達にもまた、伝わっていても可笑しくはない。


「ほんなら、お預かりします」


 風呂敷を手に、そそくさと頭を下げた男が蛍から距離を取る。
 それが鬼を知る者の反応なのだろうと、蛍はなんとも言えない気持ちで見送った。

 自分は外の鬼を知らない。
 ただその鬼は、常日頃から人に恐れられている存在なのだろう。


(…私なら、)


 しかしそれは対人である場合だ。
 鬼である自分ならば、鬼となった辛さも苦しみも痛い程理解できる。
 欲も疚(やま)しさもなく、純粋な心でその身に手を伸ばすことができるはずだ。
 禰豆子に、そうしてきたように。


「誰であれ最初はああいう反応をするものだ。鬼の恐ろしさを知っている者ならば。気にするな」

「うん。大丈夫、気にしてない」


 想定の範囲内であることには変わりない。
 気にかかっているのは、己のことではなく外部の他の鬼のことである。


「それより、するべきことがあるんでしょ? 明るいうちに」


 藤の門を潜ることもなく、先へと促す蛍に影は見えない。
 じっとその様子を伺った杏寿郎は、開きかけた口を閉じ、頷いた。


「うむ。そうだな」

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