第17章 初任務《弐》
「では先に藤の家へ向かおう。邪魔な荷物は一時的に預かってもらえば問題ない」
「邪魔だってわかってるんだね。ならなんで持ってきたの?」
「わははは!」
「あっまた! 笑って誤魔化す!」
「さあ行くぞ! この[[rb:都 > みやこ]]は広い! 道に迷わぬよう!」
「都って──」
大股で歩き出した杏寿郎を、蛍もまた追う。
そういえば目的地は知らされていなかったと、駅を出た先の光景に目を向けた。
列車での一夜は明け、明るい太陽が隅々まで照らしている。
何処までも広がる大地に、並ぶ家々。
整理された石畳の道もあれば、朱色に塗られた風情ある建物も目につく。
遠目に見えるは、高く連なる五重塔(ごじゅうのとう)。
「此処って…」
実際に目にしたことはない。
それでも有名なその都のことは、柚霧として働いていた店に来る男達の話伝に知っていた。
思わず足を止める。
まじまじと目の前の光景を見つめる蛍に、振り返った杏寿郎は爽快に、また一つ笑った。
「京の都だ!」