第16章 初任務《壱》
当然のように零れ落ちてくる愛しい者の声。
触れられた頬から熱を帯びていく感覚に、蛍はその頬を隠すかのように俯いた。
「幼子の君も君で、いつもとはまた違う愛おしさがある。許されるならば、また相手をして欲しい程だ」
「……へ?」
それも束の間。耳を疑うような投げ掛けを酷く優しい音色で貰い、蛍は思わず顔を上げた。
今、彼はなんと言ったのか。
「あいて…?」
「うむ。次はきちんと然るべき所で」
「……なにを?」
「此処で言ってもいいのか?」
「っ」
敢えて問いで返す杏寿郎に、蛍の頬に更に熱が集中した。
そんな蛍の外見にも似合う幼子のような反応に、笑顔で返す杏寿郎には欲も卑猥さも見えない。
いつものように爽やかな笑みを向ける杏寿郎は、それでも幼子の蛍が欲しいと言う。
「……き…」
「む?」
蛍は堪らず、ぺたりと小さな両手で顔を覆うと。
「きょうじゅろうの、どへんたい…」
精一杯の抗いを口にした。
「うむ。蛍相手となると否定できないな!」
「(さっきまであんなに焦ってたのに!?)じゅんのうせいたかすぎでは…!?」