第5章 柱《弐》✔
「では開始は亥(い)の刻からとしよう。その間、互いに山中に潜伏すること。合図は俺がする」
「秒殺で負かしてやるよ。精々見つからないよう隠れておくんだな」
そう言い残したかと思えば、忍者の姿がふっと目の前から消えた。
違う、目で終えない程の速さでその場を離れたんだ。
ザッと鳴った遠くの茂みを見れば、既に其処にも人影なんて残っていなかった。
…流石忍者。
勝てるのか若干不安になってきた…。
「頑張って蛍ちゃん! 宇髄さんはとってもとっても強いけど! 頑張って!」
「宇髄に勝てたら、昨夜の甘露寺との湯浴みは許してやろう。勝てたら、な」
「日頃の成果を思い出せ、彩千代少女!」
なんだか、励ましのような励ましじゃないような…。
というかまだ許されてなかったんだ、蜜璃ちゃんと一緒にお風呂に入ったこと。
とにかく今は目先のことが何より優先。
灯り一つない、真っ暗な山の中を見つめる。
杏寿郎達の言葉を背に、意を決して奥へと踏み込んだ。