第5章 柱《弐》✔
「決めるのは私。条件を呑むって言ったのはそっち」
「は…確かにな。いいぜ、万が一にでもお前が勝ったら鬼呼びをやめ」
「彩千代蛍様」
「…あん?」
「彩千代蛍様って呼んで、頭を垂れて、負けましたってひれ伏すこと」
「はあ"ん?」
あ、今カチンときたな。
その感情そっくりそのまま返してやりたい。
初めて会った時の私の感情がそれだから。
「呑むって言ったんだから、取り消しは無しだから。私が勝ったら三つ指付いて土下座。決定」
「おいおい待て待て何言ってやがる」
却下は却下します聞きません。
「なんで俺様が鬼に媚びへつらわなきゃなんねぇんだよ!」
「鬼じゃないです。私にへつらって下さい」
「なんか余計ムカつくわ!!」
ええ、ムカつきますでしょうとも。
でも私は大変やる気が出ました。
この大柄な忍者の土下座が見られるなら、俄然勝ってやろうと思えました。
条件と言うよりもうご褒美かな。
「条件を呑むと言ったのは宇髄だぞ。ならば聞かねばな!」
「蛍ちゃんに謝る宇髄さんの姿…ちょっと見てみたいかも…」
「鬼の戯言を鵜呑みにするから馬鹿を見るんだ。敗北は己の責任だ」
「お前らどっちの味方だコラ」
どうやらこっちが多数派らしい。
居合わせた柱全員が認めてしまったから、忍者も強く出れなくなったんだろう。
「っやりゃいいんだろやりゃ…! どうせ俺は負けねぇしな!」
開き直りという形で、どうやら私の条件を呑むこととなった。
「完膚無きまでに負かしてやる」
私が課した条件は私自身のやる気に繋がったけど、どうやら忍者のやる気も後押ししてしまったらしい。
すんごく目がギラついている。
左目から放射状に施されている隈取のような変な化粧の奥で、ぎらぎらと殺気立っている。
…大丈夫かな。