第16章 初任務《壱》
「体は、平気か…?」
「……へ、きじゃ…ない」
「そ、そうか。すまんっ」
「っぁ」
途切れ途切れに伝えてくる声は、いつも以上に小さく儚い。
慌てて腰を退く杏寿郎に、ひくりと少女の体が震える。
幼い蜜壺では杏寿郎の欲を、飲み込みきれなかったのか。とぷりと白濁の欲を秘部から溢れさせながら、蛍は肌を赤らめた。
「きょ、じゅろ…の…あふれ、ちゃう」
「ッ!」
ガンッ!
拙い声だというのに、語尾から伝わる艶やかな余韻。
自身を見下ろし呟く様が余りに見た目と相反し妖艶で、反射的に上げた杏寿郎の後頭部が低い天井に衝突した。
「だ…だい、じょぶ…?」
「っ~…ああ…大丈夫、だ」
痛みによる耐えというよりも、蛍の前で見せてしまった痴態に思わず頭を抱えてしまう。
「だから、あんまり煽らないでくれ…」
いくら鬼の体とて、これ以上幼い体を無理に抱く訳にもいかない。
羞恥と欲とで顔に集中する熱を片手で覆い隠しながらぼそぼそと呟く杏寿郎に、縦に割れた赤い瞳がぱちりと瞬いた。
「…きょ、じゅろ」
「…なんだ?」
「の、へんたい」
「ッ!」
ガンッ!!
ぽつりと罵られた言葉に、思わず上がる頭が二度目の衝突。
「っ~…!」
「…だいじょぶ…?」
「…面目ない…」
しゅうしゅうと頭から湯気が立つのは、衝撃故か羞恥故か。
逆立つ焔色の頭は獅子のような印象を持ちながら、項垂れる様に蛍は今一度目を瞬いた。
「…まさかきょうじゅろうに、こんなしゅみがあったなんて」
「う。」
「わたしがおにだからよかったけど、にんげんだったらせけんてきにはんざい」
「む。」
「それもれっしゃのなかで」
「すみませんでした」
鼻の利く炭治郎が、杏寿郎の匂いからは正義感の強さを感じると前に言っていたことを、蛍は思い出していた。
蛍から見ても、柱特有の斜め上をいく考え方をすることもあれど、杏寿郎は真っ当な思考を持つ者。
幼女に手を出してしまったことには、強い罪悪感もあるのだろう。
三つ指をついて土下座しそうな勢いの謝罪に、再三目を瞬く。
「ふ、」
くすりと、その口元が綻んだ。