第16章 初任務《壱》
杏寿郎が腰を打つ度に、淫らな音が立つ。
溢れる愛液が潤滑剤の代わりとなり、一切の痛みは感じない。
寧ろ挿入とはまた違う快感に、蛍は杏寿郎の掌の中でただただ嬌声を漏らし続けた。
「ふ、むっんぅッ」
「っは…蛍…っ」
額が触れ合いそうな程間近で、灯火ある視線を送ってくる。
焔色の柔らかな髪に埋もれて、射抜くような欲の瞳に捉えられて、熱く名を囁かれる。
それだけでも体は内部から熱くなるというのに、その猛りある陰茎で直接的に刺激も与えられているのだ。
絶頂の波に呑まれるのは時間の問題だった。
「んく…っぅうッ」
「体は変わっても蛍は蛍のままだな…っ一度波に乗ると、隅々まで性感帯だ」
「んむっは、ん」
掌を退いた隙間から、小さな唇を塞ぐ。
ガタタン、ゴトトンと呻る車輪に掻き消されながらも腰を揺すり素股で交われば、とろとろと少女の身も心も蕩けていく。
「ん、ぁッ…じゅろ、は…っ?」
「む…っ?」
「きもち、い?」
「ああ…っ気を抜けば、持っていかれそうだ」
実際の挿入とは違うが、それでも柔らかな腿に包まれ滑らかな蜜口を摩擦する行為は、杏寿郎にとっても十分に快感だった。
何より自分の手により翻弄されなし崩しに快楽に浸っている蛍が、目の前にいるのだ。
貪り付きたい衝動を抑えつつ、杏寿郎は柔らかな笑みを浮かべると額を合わせた。
「君とひとつになれることが、堪らなく気持ちがいい」
身体と共に、心も繋がる充足感。
建前も肩書きも何も纏っていない裸の心でただ求め合う。
そこに付け入れるものは何もない。
「っ…じゃあ、なって、よ」
「?」
「ひとつ、に…んッ」
幼い掌が、互いの体液で濡れ光る杏寿郎の鬼頭に触れる。
その言動が何を意味するのか、確認せずとも杏寿郎にも理解できた。
「…いいのか?」
「ん、」
羞恥の残る表情を浮かべながら、それでも蛍はぽそぽそと裸の想いを告げた。
「どんなわたしだって、わたしなんでしょ。わたしも、どんなきょうじゅろうだって、うけとめるくらい、できるよ」
「…蛍…」
「がまん、しなくていい、から」
幼い手が子供とは思えない手付きで、優しく杏寿郎の熱棒を擦る。