第16章 初任務《壱》
「きょうじゅろう、って…ほんと、へん」
「変か?」
「おにより、へんだよ」
「それは聞き捨てならないな。鬼程不変で異形なものなどないだろう」
「きょうじゅろうのそのおもいだって、じゅうぶん、ふへんだよ…へんなかたち、してる」
「む。」
「だから、いつも…」
「…蛍?」
そこから先は、少女の口から形と成さなかった。
小さな両手を伸ばして触れたのは、杏寿郎の頬。
精一杯頸を伸ばして触れたのは、幼き少女がするような微かな口付け。
ちぅ、と可愛らしくも思えるリップ音を立てて、顔を離した蛍の頭がとさりと落ちる。
「いつも、それしかみえなくなる」
両腕は広げたまま。まるで迎えるかのように頬を包んだまま告げる声は、幼くも熱を帯びて掠れていた。
「…ならば俺と同じだな」
ふ、と口元を緩めた杏寿郎の顔が、誘われるように下りていく。
低い天井の狭い空間では、互いの距離を離すこともままならない。
呆気なく縮まる二つの影は、やがて一つに繋がった。
「は、ぁっ…あ」
上手く身動きの取れない場所ではあったが、小さな体を剥くことは簡単だった。
丈の合っていない袴は、ほんの少し力を入れれば簡単にするりと細い体から抜け落ちていく。
全てとはいかないものの、薄い胸板も細い腿の付け根も大事なところは隠せず衣類と共に乱れる肌に、杏寿郎は目を細めた。
「熟す前の、瑞々しい果実のようだな」
「っふつうなら、そんなかじつたべないよ…」
「母は、そういう青い果実を手に入れると砂糖で煮て出してくれた」
「あ、んぅっ」
「ゆっくりじっくり、甘く煮て。そうすると大層美味くなるんだ」
「やぁっそこ、ばっかり…っあッ」
指先で、唇で、愛撫を繰り返した蛍の胸は、唾液に濡れて淫らに光る。
すっかり赤く充血した胸の突起は、膨らみなどない少女の姿には不釣り合いで、それもまた背徳感で杏寿郎の背を押す。
甘く優しく赤い芽に歯を立てれば、腕の中で囲えてしまう小さな体がびくびくと震えた。