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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第5章 柱《弐》✔



「人なら簡単に弾け飛ぶ。派手にな! 鬼だってそれは同じだ。それくらいで死なないだろうが、回復には時間が掛かる。その間に日の出を拝めば、文字通り一巻の終わりだ」


 風鈴を身代わりに、なんてとんでもない。
 この風鈴こそが、死の原因だ。
 本当に忍者の言う通り、殺るか殺られるか。

 自然と風鈴を持つ手に緊張が走る。
 さっき受け取った時に、取り落とさなくてよかった。


「ようやく自分の置かれた立場を理解したようだな」


 ふ、と忍者の口元に挑発的な笑みが浮かぶ。


「言っただろ、煉獄より厳しくいくってな。"実践"なら命を賭けないとやる意味がねぇ」


 にしても、やることが無茶苦茶過ぎる。
 隊士の訓練なら一言物申すことができるけど…でも私は鬼だから。
 そもそも甘く見て貰う方が無理な話だとは知っている。


「…わかった。やる」

「へえ。案外呑み込み早いじゃねぇか」


 やらないなんて選択肢、私にはそもそもないだろうし。


「言われた条件は全部呑む」


 ただ、


「その代わり、私も一つだけ条件を出したい」

「あ?」


 忍者の片方の眉尻が上がる。
 と、その口角はまたもやつり上がった。


「面白ぇ。これも俺の好きにしていいんだよな? 煉獄」

「ああ。構わない」

「いいぜ、その条件呑んでやる。精々勝てるような譜面(ふめん)作りをするんだな」


 譜面? 別に音楽を作る気は…って、今はそんなこと突っ込んでる暇じゃない。

 不敵に笑う、これから相手になる柱を見上げる。
 その巨体に見合った、私には大きな障害だ。
 そこを乗り越えることは難しい。
 例えどんな条件を突き付けても。

 だから一つだけ、譲れないことを口にした。


「私が勝ったら、鬼呼びをやめて」

「…は?」


 ぽかんと呆気に取られた忍者の顔。
 多分、予想と違っていたんだろう。


「おいおい、そんなことでいいのかよ。まずその勝利の為に出さなきゃならねぇ条件があるんじゃないのか?」


 忍者の言うことは尤もだ。
 でもこれは私にとって譲れないことだから。

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