第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
「冨岡さんも来てたのっ!?」
「まぁまぁ。そんな所で隠れて盗み見するくらいなら、潔く見送ればいいものを。相変わらず行動が陰湿ですね、冨岡さん」
にこにこと笑ってはいるが、棘の刺さる物言いをするしのぶに、義勇は眉一つ動かすことなく目を向けた。
その目は二人の女柱を見ているのではない。
その先に消えていった、蛍と杏寿郎の背中を追っていた。
「話聞いてます? 冨岡さ」
「もういいだろォが引っ付くな!」
「引っ付きたくて引っ付いてんじゃね…うおっ!」
「むう」
「ねぇもう帰っていい?」
再度しのぶが呼び掛けた声を遮ったのは、更に後方から続く声。
陰に潜むには大き過ぎる影の塊が、騒がしくも崩れ落ちるように出てくる。
わらわらと団子状に折り重なり見えたのは、実弥、天元、行冥、無一郎の四人。
残りの柱全員の姿に、流石のしのぶも目を丸くした。
「まぁまぁ、皆さんお揃いで…出歯亀してたんですか?」
「皆仲良しなのね! きゅんとしちゃうっ♡」
「ただの変質者だろう…見送りくらい普通にすればいいものを…」
呆れ冷たい目をした小芭内に、意義ありとばかりに行冥の巨体を退かしながら立ち上がったのは天元。
「出歯亀言うな。たかが初任務に赴くのに、いちいち見送るなんざ地味にダサいだろーが」
「そうやって地味に覗いている方がどうかと思いますけどね…」
「俺は覗きに来たんじゃねェよ。それをあの冨岡が邪魔しやがって」
「わざわざあの会話に入り込む余地はないと思っただけだ」
「そもそもいつ入り込んだことがあるんだよテメェは! いつもだんまり決め込んでんだろォが!!」
「鬼子も手一杯だったのだ…初任務前に無闇に我らで騒ぎ立てる必要もないだろう…」
「…ねぇ、俺もう帰っていい?」
先程まで一切の気配を殺していたとは思えぬ程の、見事にてんでばらばらな個の押し付け合い。
当主である産屋敷耀哉無しでは協調とは程遠い彼らに、小芭内は更に重い溜息をついた。