第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
「継子風情が何を偉そうに。大体何を見ると言うんだ」
「えっと…食事の管理とか? 杏寿郎一人だとどうしても偏ってしまうし…あ、睡眠の確保も。寝起きはいいけど、鍛錬漬けになると徹夜なんて簡単にするし…そうだ、衣類の管理も。羽織はあの一枚しかないのに、汚すことも多いからよく洗濯し」
「蛍。蛍。もうそれくらいにしてくれないか」
「え? でも本当のことで」
「とても恥ずかしい!!」
あ。はい。
そうだよね、柱だもんね。
ごめん、つい日常の癖が。
基本的には規則正しい生活をしてる杏寿郎だけど、鬼の私が夜行性だから。
そこにつき合ってくれている杏寿郎の生活習慣も、色々崩してしまっている気もする。
だからついあれこれ心配してしまうんだけど。
堪らず頸を突っ込んできた杏寿郎は、こっちに歩み寄っては来なかったけど後ろで笑っていた。
いつもより硬い笑顔で。
「そういうことは自分の世話を一人前にできるようになってから言え」
「…はい」
杏寿郎のお陰で空気が幾分解れた所為か、溜息混じりの伊黒先生から殺気はもう感じなかった。
でも、その言葉は尤もで頷くことしかできない。
鬼である以上、鬼殺隊では誰かの世話にならないと生きていけないから…簡単なようで私には難しいこと。
どうしよう、解決策が思い付かない。
「だがあいつが自分の身の周りを疎かにするのも事実だ」
俯きがちになっていた視線が上がる。
どうしようかと悩んでいた私の思考を、見透かすように。
「他人にばかり目をかける奴だからな」
「あ、うん。わかる」
「面倒事でもなんでもホイホイとすぐに引き受けて」
「うん。それもわかる」
「だからわざわざ見てやっているんだ。そこまで言うのなら、その面倒事も全部引き受けるくらいの覚悟でやれ」
「うん! わかった!」
杏寿郎あるあるに頷いていたら、まさか承認されるとは思わなかった。
思わず流れに沿って大きく頷いてしまう。
「任せて。杏寿郎の衣食住は大切にするからっ」
「俺のいないところでは、だ」
「了解です!」