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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔



 身近に悲鳴嶼さんや天元がいるから忘れがちだけど、杏寿郎も一般男性にすれば十分背丈も体躯もあるもんね。


「湯加減はどうだ?」

「丁度いいよ」

「うむ! よかった!」


 広い杏寿郎の胸に背を預ける。初めて体を重ねた日も、緊張している私を気遣ってくれたのか急に後ろから抱っこされたんだっけ…。
 夜一緒の布団で寝る時も、私の後ろから包むように抱きしめて寝ることが多い。

 大きなその体に包まれる感覚は好き。
 どきどきするけど、でもほっとするから。

 ちらりと振り返れば、長い髪が湯船につかないように手早くまとめる姿が見えた。
 癖のある髪を紐で下辺りでお団子にしてまとめる。
 日常的にも上の髪は一つにまとめてるもんね。
 癖っ毛だから鍛錬中とか邪魔になるのかな、と思って見てたけど。

 下ろされている長い黄金色の髪が、動きによってふわりと波打つ。
 その姿も好きだったりする。


「蛍?」


 じっと見過ぎていたのかな。
 大きな目がこっちを見て頸を傾げてきた。
 わ、なんか恥ずかしい。


「どうした? 逆上せたか?」

「ま、まさか。まだそんなに浸かってないよ」

「しかし顔が赤いようだが…飢餓の兆候か?」

「それも関係ないって。というか杏寿郎が血をくれたでしょ。…その、さっき」


 抱かれている間、とは言えずにぼかして伝える。


「与えたと言っても、普段与える分には足りない程少量だ。あれくらいで満足しないだろう?」

「満足するしないの問題じゃないよ…ああいう時に、ああいう形で血は要らないって。前にも言ったよね」


 体が興奮状態にあるからなのか。あんな深い接吻の合間に血を飲まされれば理性も揺らぐ。
 杏寿郎を襲ったりなんて絶対にするつもりはないけど、驕る気もない。
 そもそも体は高揚してしまって自制が利かなくなるのは当然だから。
 だから気を付けてって前にも言ったのに…。


「すまない。しかし君なら耐え得るとわかっていた。それに少量でも分けて与えれば、日頃から飢餓症状が出る可能性も減るだろう」

「それは…」


 そうかも、しれないけど。
 確かに杏寿郎とああいう形で血を貰ってる間は、飢餓はこない。
 自分の体で実感していることだから反論できなかった。

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