第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
「でも意外だった、かも」
「うん?」
「杏寿郎が、その…そんなに、その…」
性欲強かったなんて。
とは、なんだかはっきり口にできずに口籠る。
初めて抱かれた時は、最後こそ間髪入れず責められたけどその一度きりだったし。
今思えば、あれはあれで我慢してたのかな…もしかして。
昨夜だって何度私の中で果てても衰える気配なかったし…最後は、お腹の中が熱くて意識も一緒にぐるぐる回ってる感じだった。
…あ。
思い出すと変にまた感じてしまいそうで焦る。
「俺も知らなかった。蛍相手となるとこんなに耐性がなくなるとは。男としてまだまだ未熟だな」
苦笑混じりに杏寿郎は零していたけど、私は未熟とは思わなかった。
それだけ私を求めてくれているからで…やっぱり嫌じゃなかったから。
…私も中々に重症かも。
「いいよ、杏寿郎は杏寿郎のままで。私は今の、ありのままの杏寿郎が好きだから」
そっとその胸に背中を預けて身を寄せる。
湯気の立つ蒸し暑い空間でも、濡れた裸はほんのり震える。
すると杏寿郎の太い腕が私の膝裏と背に回って、優しく抱き上げられた。
「体は綺麗にした。後は温めなければな」
そう告げる杏寿郎の表情は、見ているだけで胸がとくとくと音を立てそうな程柔らかで、あたたかい。
「うん。ありが…」
って待って。
「綺麗って、どこまで?」
そういえばお腹に熱くぐるぐると感じていた杏寿郎の精子の気配がない。
もしかしてそこまで綺麗にされたんじゃ…
「? 隅々だ!」
え、どっち。
どっちなのそれは。
初めて抱かれた日に、私に子が宿ることを望んでくれた杏寿郎だから。
綺麗にしたのかしていないのか明確な答えがわからない。
問いの真意にも気付いていないようだし。
でも正直に答えてくれている杏寿郎に、それ以上は何も訊けなかった。
問うだけ私が恥ずかしくなるだけだし…というかそんなに触られてたのに起きなかったなんて。
余程疲れていたのかな。
「蛍はここに」
それとも余程、安心していたのか。
言われるがまま、杏寿郎の脚の間に座って共に湯に浸かる。
大きな浴槽だから二人でも入れるけど、蜜璃ちゃんと入った時とは比較にならないくらいにざぱりと沢山の湯が溢れ出た。