第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
「蛍…っ」
「ふ、あッ…き…じゅ、ろ」
名を呼べば、応えるように蛍もまた名を紡ぐ。
辿々しくも懸命に応えようとする姿に、心の内側がなんとも言えない想いで溢れる。
想いに呼応して自然と速くなる腰の動きに、跳ねる体を抑えるように強く縋り付いてきた。
互いに服を着たまま行う交合は、夏場の締め切った部屋では尚の事熱気が溜まる。
肌を滑る汗に、どちらともつかない溢れる欲の体液で淫らな音が室内に木霊する。
それでも止められずに激しさを増す律動に、蛍の声が切羽詰まった。
「ふ、ァあッきょ、じゅ…ッも…!」
「っああ、」
高みに昇り詰めているであろう、蛍に端的にだけ応えて押さえるように腰を掴む。
蛍が一層感じる柔らかな膣壁に小刻みに魔羅を打ち込めば、びくびくと白い体が震えた。
「っんあッあ…!」
「ッ…!」
搾り取るように締め付けてくる蛍に耐えながら、仰け反る体を掻き抱く。
柱として扱う呼吸とは違うが、乱れた息を整える為に深く息を繋いだ。
「っふー……蛍、」
高みへの震えが小さくなった頃、今度は触れ合うだけの口吸いを向ける。
啄むように柔らかな唇に触れながら間近に見える顔を覗けば、快楽の余韻に浸る蛍の表情があった。
蕩けるように潤んだ瞳に、上気した頬。
乱れる髪が肌に散り、紅を差したように赤く濡れる唇。
どこか夢心地のようなその表情を前にすると己の欲が騒ぐ。
俺しか見えていないこの蛍が、もっと欲しいと。
「…まだ、いけるか?」
我ながら早急かとも思うが、何度もこの体を抱いてわかったことがある。
鬼である蛍は、甘露寺と等しく一般的な女性以上の体力を持つ。
立て続けに気をやったくらいで早々力尽きたりはしない。
その俺にとって都合の良い体をここぞとばかりに利用する。
なんとも我ながら浅ましい欲だ。
濡れた瞳をそのままに、赤い唇が俺の唇に重なる。
明確な言葉はなくともそれで十分だった。