第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
力の抜けた体をそっと畳の上に寝かせる。
何もないよりはと己の羽織を敷いて寝かせた体は、辛うじて着衣していた着物を崩し、より白い肌を晒してきた。
鬼の体というものは屈強で硬く、時に人体ではあり得ない形状も取る、得体の知れないものだ。
しかし蛍の体は違う。
陶器のように白く、手に吸い付くような柔らかな肌。
顔を埋めたくなるような香る髪に、発情した匂いは甘く俺の欲を煽る。
「は、ァんッ」
その欲を掻き立てられるまま覆い被さるようにして蛍の体を抱く。
甘く蕩ける蜜壺のような蛍の中を余すことなく味わうように。
再び腰を振り始めれば細い腕が俺の背を抱いた。
本来ならば俺が喰われる側である存在だ。
その鬼である彼女を喰らっていることに、不思議と気持ちが高揚するようだった。
何度も何度も腰を打ち、腕の中で跳ねる姿を逸らすことなく見つめる。
濡れた瞳が何かを乞うように俺を見るから、誘われるままに唇を重ねた。
「ンっふ、ぅッ」
激しい律動の中で、ぎこちなくも舌を絡ませ合う。
息継ぎの合間から漏れる蛍の喘ぎに焦燥が見える。
気遣いよりも抱きたい欲が己を越えて、感情のままに口内を犯せば微かな痛みが走った。
鋭利な蛍の牙も爪も、人の肌を容易く裂く。
だからこそ俺に抱かれる時はいつも以上にしおらしくなるのだろう。
そんな蛍の姿も愛らしいが、それ以上に見たいものがある。
「っぁ…」
「ん…大丈夫だ、蛍。我慢できるだろう?」
「ぅ、あッ」
「俺に集中」
気遣いのない口吸いで流した舌の血を、唾液に混ぜて蛍の喉に流し込む。
極少量の為これくらいなら蛍も飢餓が強くなければ暴れはしない。
その代わりに強い酒を煽ったかのように蛍の表情ががらりと変わる。
蕩けた瞳は猫のように瞳孔を開き、鋭利な牙を見せる口元がだらし無く半開きとなる。
故に更に大きく上がる嬌声を促すように、深く蛍を貫いた。
「ふあッあ! ン、は…!」
快楽に揺さぶられ、理性を薄め、それでも俺を見失わないようにと赤い瞳を向けてくる。
俺だけを求めて縋る体に、高まる欲と充足感。
気付けば自然と口角は上がっていた。