第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
ぽたりと畳の上に落ちる愛液。
気だるげな息を零す蛍のうなじに添えていた手で、まとめられた髪を崩す。
差し込まれている丸い玉簪を抜けば、はらりはらりと落ちてくる髪。
継子である面影を消し去る蛍の後頭部に手を添えたまま、零す息ごと口で塞いだ。
何度も交わした、静かな口吸いとは違う。
深く交え、舌を絡ませ、唾液を渡す。
そうして蛍と深く唇を重ねる際は細心の注意を払う。
鋭い蛍の牙で、俺が流血してしまわぬように。
「ん、ん」
最初こそ血に呑まれてしまい控えめだった蛍も、何度も口吸いを俺が求めることで控えめさが薄れてきた。
小さな口を開けて応えようとする様がまた愛おしい。
絡ませてくる舌を優しく咥えて吸い上げれば、快楽の余韻に浸かっていた体が再び震え出す。
蛍の中から抜くことなく埋めていた指を再度動かせば、縋り付いていた手が押し返してきた。
「んッ…杏寿、ろ…も、指はいいから…」
「そうか? ここは気持ち良さそうに俺の指を咥え込んでいるが」
「杏寿郎が、いっぱい、弄るから、でしょ…っあッ」
俺の指で気をやったのは既に二度目。
感度の良い蛍の体は、快楽のツボを押せば容易く俺の手の中に堕ちてくれる。
それが俺にとっても一種の快感だと気付いたのは、最近だ。
「杏寿郎が欲しいの…っ指だけじゃ、足りない」
照れ癖もあるが、快楽を求める蛍は時に素直だ。
切なそうに眉を潜めて俺を求める姿に、ぞくりと背筋が震える。
「では蛍自身が挿れてくれるか? 俺の手は、この通り蛍を支える為に塞がっているからな」
「っ…」
秘部から抜いた指で、濡れた入口を優しく撫でる。
そのまま膝立ちの蛍を己の胡坐の上に導くように腰を支えて上げれば、濡れた赤い瞳が恨めしそうに俺を見た。
「…偶に意地悪だよね、杏寿郎って…」
そうか?
「俺の言動に精一杯応えてくれようとする蛍が愛らしくて仕方ないだけだ」
「っ」
己の感情を一字一句違わず伝えれば、髪の隙間から覗く耳が赤くなる。
うむ、やはり愛らしい。