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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔



 お館様の仰る言葉は、理解できた。

 確かに、いつ死んでも可笑しくはなかった蛍を見つけて、この鬼殺隊本部まで導いたのは冨岡だ。
 蛍にとって冨岡はただの剣士ではないだろう。
 その証拠に、彼を見る時の蛍の目は、他柱を見る時とは少し違って見える。

 最初は俺の勘違いかとも思っていたが、そうでもない。
 節分の事前集会で言葉を交わす二人の間には、二人にしかない空気があった。


「いつ死ぬとも知れない地で、自ら生きる道を広げ、模索して進んでいる。そんな蛍と義勇との結び付きだから、大切にしたいと思っている」


 …お館様の仰る言葉は、理解できた。

 蛍と冨岡の間にあるものは、ただの繋がりではない。
 特別なものだと、思っている。

 …そうだ、あれは特別なものだ。
 だから俺も、過剰に反応してしまっていたのだろうか。


「それは杏寿郎との結び付きも同じだよ」

「…は?」


 人には人の役割がある。
 だからこそ認めるしかなかったものを、思いも掛けない形で振られた。
 不甲斐なくも、反応が遅れてしまう。


「蛍は、君を選んだ。運命という定められし道がもしあるならば、そこにはなかったはずのものを蛍は見つけ出した。それが杏寿郎、君だ」

「……」


 …確かに俺は、最初は蛍のことを否定していた。
 斬首すべき対象としてしか見ていなかった。
 そのことをお館様は仰っているのか理解し兼ねたが、それ以上に気に掛かったことがある。

 お館様は、蛍が俺を選んだと言った。
 蛍を継子として迎えたいと告げたのは俺自身だ。
 となると、その意味は──


「蛍と君が結ばれたこと。とても嬉しく思っている」

「──!」


 確信した。
 お館様は、俺と蛍との関係に気付いておられる。


「…結ばれた、とは…」

「そのままの意味だよ。説明しなくても、杏寿郎ならわかるだろう?」


 やはりそうだ。

 元々、予知ではと思える程に観察力も洞察力も優れた御方だ。
 宇髄が告げ口した訳ではないだろう。
 お館様に蛍との関係を見破られてしまうのは、時間の問題だったのかもしれない。

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