• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔



「──では、お願いできるかな?」

「御意!」


 それから数日後のこと。

 お館様との謁見の間。
 一対一で向き合った御人を前に、託された任務を受任していた。

 短期間のうちに、四十人以上の人が行方不明となっている汽車が存在するらしい。
 今まで何人もの剣士を送り込んだが、全員消息を絶った。
 故に柱である俺に託された任務だ。

 元々、任務の話は要を伝い聞いていた。
 それでもお館様と直接言葉を交わす為に此処へ訪れたのは、受理以外に別の目的があったからだ。


「蛍の初めての長期任務ともなるね。面倒を見てあげるように」

「は! 蛍は鬼殺剣士に負けず劣らずの実力の持ち主です! 師としても期待しております!」

「うん。私もだよ」


 今回の討伐任務で、初めて蛍を同行させる。
 鬼殺隊の本部から彼女を連れ出すのも初の試み。
 いや、初詣のことがあったから二度目だな。
 それでも任務として連れて行くのは初めてのことだ。

 お館様に提案した時は受けて貰えるか些か不安だったが、それも杞憂だった。
 快く認めてくれたお館様に、深々と頭を下げる。


「では早速、蛍にも報告を──」

「杏寿郎」

「はい?」

「君の下で過ごす蛍は、どんな様子かな。変わらず人としての心を磨いているかな?」

「は! 以前報告した通り、彩千代蛍は変わらず人として周りの人々と関わり、心を育て、己を磨いています。鬼でありながら鬼ではない。人として扱うべき存在だと自負しております!」

「それは嬉しいね」


 迷うことなく告げれば、お館様の微笑みが一層深まる。


「杏寿郎も義勇と同じように蛍を人として視てくれるようになって、私も嬉しい」

「…はッ」


 お館様の賞賛だ。
 普段なら喜びしか感じないものなのに、一瞬言葉が詰まったのは、その名を聞いたからか。
 その名を口にするお館様の顔が、慈悲に満ち溢れていたからか。


「初めは義勇一人だった。あの子を人として見て、受け入れた者は。しかしその逆境を変えたのは蛍自身。その心の芯の強さには私も一目置いている。あの子は弱くも強い、愛しい子だ」

/ 3466ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp