第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
「なんか得した気分」
「…奇遇だな。俺も同じ気分だ」
「そうなの?」
きょとんと見上げてくる蛍の頭上から離さないように傘を固定したまま、先程より近付いた体温を己の体で感じ取る。
鬼を滅する為に身を置くこの地で、こうも幸福を感じることができるとは。
何より得をしているのは他ならぬ俺だろう。
それは口にせず、代わりに再び繋いだ手を一層優しく握り締めた。
その温もりを、離さないように。
「でも杏寿郎のさつまいもの掛け声が、そんな素敵な理由だったなんて」
「そうか?」
「うん。もっと色々聞きたいな。杏寿郎の思い出話」
「そうか! では……っそうだ! 蛍!!」
「え? な、何。声大きい」
「今度、薩摩芋水を作ってはくれないだろうか!」
「さつまいも水?」
「うむ! 檸檬水なるものと道理は同じだ!」
「……杏寿郎」
「む?」
「好物ならなんでも美味しくなる訳じゃないと、私は思う…」
「!!」
まさか宇髄と同じ顔をされるとは。
よもやよもや、だ。