第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
「ああ見えて不死川は右脇腹を一等痛めている! 俺が急所突きしたからな!」
「へ?」
「煉獄テメェ、何ほざいて」
「俺の包帯をやろう! 不死川の手当ては任せた!」
「え、あ、ハイっ?」
「手当てなんざいるかァ! 大体あんなもん痛くも痒くも」
「そうか!!」
「ッ!?」
ならば問題ないだろうと脇腹を叩き込めば、途端に不死川の罵声が止まった。
青褪めて震え固まるところ、痛みはしっかりあるのだろう。
それでも弱音一つ吐かないところが彼らしいが。
「見ての通りだ! 悲鳴嶼殿の所で手当てをするといい! 俺が鴉で先に伝達しておこう!」
「は、はいっ」
「煉獄…テメ…」
「大人しくついて行かねば、悲鳴嶼殿からも拳を受けることになるかもしれないぞ?」
「…っ」
柱同士でも牙を剥くことが多い不死川が、全くと言っていい程敵意を向けないのが女性である甘露寺や胡蝶と、そして悲鳴嶼殿だ。
それを知っていたからこそ念押しの為に告げれば、荒立てていた口が止まった。
うむ、よし!
「では任せた! 要!」
玄弥少年の背を押して、窓際に立ち鎹鴉の要を指笛で呼ぶ。
「相変わらず、誰も彼もに面倒見が良いですね」
「そうか?」
要に不死川兄弟のことを伝え飛ばしていると、胡蝶が再び笑いかけてきた。
先程の言葉が止まるような冷笑ではない。
彼女の機嫌も少しは直ってくれたようだな。安心だ!
「胡蝶の方こそ、新人隊士達を一同に受けて世話をしているだろう! 継子にするのか?」
「それはわかりませんが、少なくとも柱同士で拳を交えてまで面倒を見るつもりはありませんから。少しは自重して下さいね? 隊士同士の喧嘩は御法度ですよ」
「面目ない!!」
それを言われてしまえば返す言葉がないな!
「おい煉獄。お前にも来たぜ、迎え」
「む?」
胡蝶と話していれば、三人の奥方を連れて去ろうとしていた宇髄が、不意に入口で呼びかけてくる。
その大きな体の隙間を縫うようにして、診療室に顔を出した女性が一人。
「お邪魔します…っ」
息を切らすようにして現れた、蛍だった。