第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
「発破かけたのは煉獄だっての。ちなみに竹林刻み飛ばしたのは不死川な」
「違ぇだろ! 派手に爆破させたのはお前だろォが!」
「うむ! 皆で仲良く消し飛ばしたな!!」
「仲良くじゃねぇっつの!!」
「どこが仲良くだァ!!」
「皆さん仲良く馬鹿まっしぐらですよ。さっさと手当てを済ませて下さい。自分で」
騒ぐ我らとは違い、冷笑で包帯一式を差し出してくる胡蝶には静かな圧がある。
宇髄と不死川の圧を前にしても竦みはしなかったのに、どうにも胡蝶の圧には偶に言葉が止まる。
それは二人も同じだったのか、両隣で騒ぎ立てていた声がぴたりと止まった。
うむ…此処は蝶屋敷だ。
主の言葉に従うとしよう。
「天元様! ご無事ですか…!?」
「柱同士の論争に巻き込まれたとか…!」
「きゃあ! なんですかその痣~!!」
「雛鶴まきを須磨? なんでお前ら…」
「私が呼んだんですよ。此処に長居されても困りますから。皆さん、迎えが来たらさっさと帰って下さい」
あちこちにできた痣や切り傷を消毒していれば、騒がしい足音と共に駆け込んできた三人のくノ一。
宇髄の奥方達だった。
顔にも痣を作っている宇髄を、心底心配する様は見ていて微笑ましいものだ。
弟との確執はあれど、三人の女性を愛せる広い心の持ち主だからな…いずれは弟君とも和解すればいいが…。
「迎えってなんだ、餓鬼じゃあるまいし…」
「不死川さんにも来てますよ」
「あ?」
「迎え。丁度彼も診察に来ていたので」
「ぁ…兄貴っ」
「!」
診療室の入口から恐る恐るというように、姿を見せたのは玄弥少年。
途端にがたりと席を立つ不死川から一気に感情が消える。
「柱同士で戦り合ったって…」
「煩ェ」
「でも、怪我」
「テメェには関係ねェ」
「っ…」
「玄弥少年!!」
「!? な、なんスか」
手当ても程々にその場から去ろうとする不死川を、追いかけながらも尻込みする玄弥少年。
その姿に見過ごせず呼びかければ、少年の体が跳ね上がるようにして振り返った。